51年東宝／出演：春日野八千代（専科）。頃は歌舞伎華やかなりし戦争前のこと、六代目菊五郎（花柳章太郎）演じる藤娘の典雅な日本舞踊の醍醐味に満場が息をのむ、その観客の中には、新橋の芸者・小奴（春日野八千代）がいた。美貌で芸ひとすじに生きる小奴は、歌舞伎の権威である山吹周吉（古川緑波）の勧めに応え、舞踊家として身を立てる決心をする。山吹は、早速踊りの指導を菊五郎に依頼すべく六代目邸を訪れ、歌舞伎以外の者には断じて教えられぬという菊五郎を説得し、踊りのすじだけでも見てもらうことになった。真剣に舞い踊る小奴を凝視する六代目は、彼女の将来に太鼓判を押し、前例を破って直々に指導することを約束する。その夜、希望に満ちた彼女を優しく送ってくれた六代目夫人の実弟の海軍将校・山村耕一（竜崎一郎）の面影が、いつしか彼女の胸の中に深くやきついていった。そして、名を花柳寿美と改め、新しい舞踊の世界の生活が始まった。

主な出演者春日野八千代