94年花組公演「冬の嵐、ペテルブルクに死す」と同じ題材を取り上げたオペラ「スペードの女王」。原作は、ロシア近代文学の確立者であり、国民的詩人プーシキン。彼の詩の優れた音楽性は、ロシア国民だけでなく、多くの作曲家の創造性をも触発し、「ボリス・ゴドゥノフ」「エフゲニー・オネーギン」など、数多くのオペラや歌曲を生み出してきた。「スペードの女王」は、1834年に出版され、プーシキンの生前初めて好評を博した珠玉の中編小説である。賭博で身を滅ぼす野心家の近衛士官ゲルマンの姿を、淡々とした文章と、スピーディな展開で、意外な結末へと引き込む。原作では、ロマンティックな要素は極力抑えられ、一貫して冷たい批判的な視点が貫かれているが、チャイコフスキーは、人間と運命の葛藤という原作と共通のテーマを表現しつつも、よりドラマティックなオペラとして作品化している。

主な出演者作曲：ピョートル・イリッチ・チャイコフスキー 指揮：アンドリュー・デイヴィス 演出：グラハム・ヴィック 出演：ユーリ・マルーシン、セルゲイ・レイフェルクス、ディミトリー・カリトノフ　他