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![]() ![]() つつじが咲き、新緑がまぶしい5月がやってまいりました。お久しぶり、MKです。ファンの目線でスカイ・ステージの番組をレポートする「番組をチェック!」、今回は、新人公演シリーズをまとめて取りあげましょう。公演ごとに、宝塚大劇場と東京宝塚劇場でそれぞれ1回だけ行われる新人公演。原則として入団7年目までの若手で行われるこの公演は、なにせ1回きりですからチケットも入手しにくく、見たくても見られない人がほとんどでしょう。その幻の新人公演を見られるというファン待望の番組が、新人公演シリーズなのです。これこそほかでは望めない、スカイ・ステージならではの番組でしょう。開局当時から待ち望まれていた企画ですが、満を持して始まったのが昨年11月。今月5月、宙組「カステル・ミラージュ」で、早くも7回目を迎えます。 ところで見る側にとって、新人公演の魅力って何でしょうか? 私は、それはズバリ「可能性」の「発見」だと思います。若手だけの公演ですから、技術的に荒削りなのは当然ですが、それよりも見たいのは、才能の芽吹き、輝きの可能性。そこで「発見」のその1は、まずスターの発見でしょう。スターというのには技術的な完成度を超えた「何か」が必要だと思いますが、その「何か」を見極めるにはまず舞台の中央に立たせてみる、これにつきるのではないかと私は思います。それには新人公演ほどいい場所はありません。しかし発見するのは何もスターだけに限りません。本公演ではベテランが演じるような渋い役も、新人公演では若手が演じます。そこで生きる個性というのも舞台には必要だし、そういう可能性を持った人が育ってこそ、舞台は充実します。新人公演はそういう人を発見する場でもあるのです。さらにダンスや歌の名手の発見にも、新人公演はいい機会です。ダンスは若手でも何人口かで見るチャンスがありますが、歌に関しては、下級生のソロを聞く機会はそんなに多くなく、新人公演はいいチャンスです。また、以上に加えて、テレビで新人公演を見ることには、アップがあるという利点があります。劇場ではよほど前列でないと見ることのできない微妙な表情や感情の動きが、テレビなら間近で見られるのです。つまり劇場では見きれないデリケートな演技が、スカイ・ステージなら味わえるのです。
そんな観点からの新人公演をチェックしてみました。まずは新人公演シリーズがスタートした昨11月の第1回は '98年・雪組「春櫻賦」、貴城けいと紺野まひるの主演作(作・演出:谷正純。新人公演担当:大野拓史)。主役の謝名龍山(本役・轟悠)を演じた貴城は、新人公演主演3作目。さすがに危なげがありませんが、そこでの発見は、甘やかで優しげなイメージとは違った、貴城の演技の剛毅さでした。本役・轟の芸風に影響を受けたのかもしれませんが、それが甘い容姿に迫力を与え、魅力を深めていました。ここ数年の貴城は「アンナ・カレーニナ」のカレーニン、「追憶のバルセロナ」のジャン・クリストフなど、屈折した役、一癖ある役でのヒットを飛ばしていますが、その原点はここにあるのではないでしょうか。相手役の小紫(月影瞳)は、やはり経験豊富な紺野まひる。パキパキとした現代っ子ぶりで、気が強く元気な役を、はなやかに演じています。敵役・秋月数馬(香寿たつき)の彩吹真央、御気楽座座元・喜楽房遊三(汐風幸)の未来優希は、実力派らしくきっちりとした演技。さらにこの公演では、愛耀子、すがた香など、老け役や脇役に好演が目立ちました。その中でもとくに目を引いたのが、本役・汝鳥伶の謝名利山を演じた穂高ゆう。立ち姿が立派で、殺されるときの哀切で毅然とした表情は忘れられません。琉球国王・尚寧(箙かおる)の愛希朱里も格が高く立派でした。貴咲美里は、本役が大きな役のせいか、新人公演では御気楽座の飯炊き婆さんや旅芸人一座の親方女房など専科のベテランが演じた3役を、思い切りよく気持ちよさそうに演じています。またアップ画面の後ろの方に随分ときれいな娘役がいるなと思ったら組替え直後の檀れいで、セリフのないところでもちゃんと演技をしていて、目を引きました。
続いて昨12月に放送されたのは、第2回 '98年・宙組の「エクスカリバー」。夢輝のあと南城ひかり主演です(作・演出:小池修一郎。新人公演担当:中村一徳)。夢輝はこれが新人公演初主役。歌、ダンス、演技と実力には定評のある人ですが、この作品と役は、姿月あさとの持ち味に合わせた、一種のおとぎ話。どちらかといえばリアルな夢輝の芸風とどうフィットするか、見る前は少々心配したのも確かです。しかし、冒頭登場し歌い出したとたんに、そんな心配は吹き飛びました。白と金のコスチュームもよく似合って華やかで、歌声は温かく、姿月とはまた違ったジェイムズ像が確実に伝わってきたのです。このジェイムズからは、後年「イーハトーヴ 夢」で少年ジョバンニをはまり役にした資質が発見できた気がします。さらに明るさと温かみの中にかげりがうかがえるのも夢輝の特質で、それがこのおとぎ話にニュアンスを加えていました。南城のロザライン(花總まり)は、ドレスもよく似合い、何より声が美しく、懸命で可憐でした。久遠麻耶はクリストファー(和央ようか)。黒髪、黒のコスチュームの敵役ですが、久遠にはプロローグのロングの金髪、白と金の衣装の王子さまルックの方がしっくりきました。久遠の持ち味は、やはり甘い王子さまなのでしょう。吟遊詩人アンドリュー(湖月わたる)という進行役には朝比奈慶。セリフが明快で押し出しが強く、アクションが派手。役割から飛び出そうなほどの迫力です。ただ朝比奈の場合、目が何かを企んでいるのですね。翌年朝比奈は「TEMPEST」のエアリエルで企み+妖しげ系の魅力を発揮、以後その路線一直線となります。そのほか、ジェイムズの育ての親スタイン(真中ひかる)夢月真生の芯の強い演技、達つかさのゴールデン・ディア(希佳)のはじけたダンス、元王妃マリアンヌ(美々杏里)菊穂りなの気品あるたたずまいが印象に残りました。
2003年を迎え、1月の第3回は '98年・花組の、「SPEAKEASY」(脚本・演出:谷正純。新人公演担当:荻田浩一)。真矢みきが演じたマック・ザ・ナイフことマクフィスに、新人公演初主演となった瀬奈じゅんが挑みました。個性の強い真矢の、その個性に当てはめたようなマクフィスを演じるのはかなり大変だったはずですが、瀬奈は髪をオールバックにして、若々しく熱演。本役を生かしながらも、自分なりのマクフィスを見せてくれました。暗黒街の帝王で数々の悪に手を染めながら女性に対しては優しい、そんな複雑な人間に、真矢よりさらりとした演技で説得力をもたしています。さらに客席上がりの冒頭から場内の雰囲気をグッとつかんでいるのにはびっくり。その空間把握力にスターの素質を発見したのは私だけではないでしょう。相手役のポーリー(千ほさち)を演じたのは、これも初主演の沢樹くるみ。しっとりした情感の沢樹に、これも千に当てた暴走娘の役は柄違いですが、ガラリと痩せるくらい役に打ち込んでいる姿には迫力があり、その懸命さで役を自分に引き寄せていました。ポーリーの父で詐欺師の元締のジョナサン・ピーチャム(愛華みれ)には、水夏希。愛華が持ち前のひょうきんさでクリアした役を、水はシャープな押し出しでクールに演じきった印象です。マクフィスを巡る女たちはそれぞれ好演でしたが、筆頭はなんといっても長年の情婦ジェニー(詩乃優花)を演じた大鳥れいでしょう。大人っぽく妖艶なあでやかさで、存在感抜群。マクフィスとのやりとりも情感たっぷりです。大鳥はこの公演後トップに抜擢されますが、それも当然と思える出来でした。そして2番目の妻ルーシー(渚あき)には、当時入団2年目の彩乃かなみ。研2とはとても思えないほど堂に入った演技で、大器を印象づけています。
2月の第4回は、「皇帝」。 '98年、星組トップ麻路さきの退団作品(作・演出:植田紳爾。演出:石田昌也。新人公演担当:大野拓史)を放送しました。麻路が演じたローマ皇帝ネロに、新人公演主演3作目の音羽椋が挑みました。音羽はそれまでも「誠の群像」の土方歳三、「ダル・レークの恋」のラッチマンと、持ち味のまったく異なる麻路の役に挑戦し、スターとしての成長を見せてきましたが、ネロはとりわけ麻路ならではの個性が生きた役。衣装も大きく、麻路のスケールの大きさがあるからこそ成り立つ役です。しかし音羽はまず冒頭の出に華があり、ダンスシーンでは空間を切り裂くような鋭さを見せて、強靱な魅力を発揮。そして暴君を装う真情を諄々と説く芝居に、説得力がありました。細かい表情の変化も見逃せません。そして妻オクタヴィア(星奈優里)には秋園美緒。前年「Elegy 哀歌」でイゾルデを演じた経験がものをいったのでしょうか、ドレス姿が美しく、品格があり、さすがでした。そして声が美しくセリフが流麗で、ほれぼれと聞き入ってしまったほど。位の高い役が似合う、格のある娘役でした。シーラヌス(稔幸)には朝澄けい。気品高くさわやかで美しい舞台姿でしたが、やや華奢な印象も。それと対照的に色が濃かったのは真飛聖で、ブッスル(絵麻緒ゆう)を精悍に演じ目立っていました。ネロの母アグリッピナ(邦なつき)には羽純るい。若くグラマラスで貫禄もあり、華やかな中に妖気まで漂っていて、迫力がありました。脇では、セネカ(千秋慎)を演じた司祐輝のほとんど腹芸というデリケートな演技がさすがで、またサビナ(彩輝直)の雪路歌帆は的確な少年ぶりで、こういう役もはまるのかと、これは発見でした。メッサラ(万里沙ひとみ)の妃里梨江は、人形のように美しく可憐です。
続いて3月、第5回は、雪組の「浅茅が宿」( '98年。作・演出:酒井澄夫。新人公演担当:齋藤吉正)で、貴城けいが檀れいと組んで上田秋成の幻想世界に挑戦しました。この作品の勝四郎(轟悠)は、夢を抱き惑う青春そのもののようなキャラクター。貴城の容姿、資質には、前回の「春櫻賦」の謝名龍山よりもより素直に似合う役だけに、若々しく美しく、演技的にも的確な勝四郎でした。骨太さも感じられ、これには龍山の経験が生きたのでしょう。初主演の檀は、月影瞳が演じた宮木/眞女児という対照的な二役。出番中に停電で舞台が中断するというハプニングにも関わらず落ちついて舞台をつとめあげ、注目されました。月組時代からいざとなると思い切りのいい演技を見せていた檀ではありますが、再開後の方が美しさが増して見えるのだから、その舞台度胸は大したものです。宮木のしとやかさ、眞女児の妖艶さを演じわけ、演技力も証明。その後月組トップ娘役に抜擢されています。勝四郎の親友・曾次郎(香寿たつき)には立樹遥で、持ち前の明るさが生きていました。法師(箙かおる)の未来優希はうまいのですが、本役の闇を感じさせるような妖気がもう少しほしいところ。時貞(汐風幸)の彩吹真央は立ち姿、セリフが凛として立派でした。またまろや(小乙女幸)を演じた愛耀子が、怪異を直球で演じて怖いくらいの迫力があり、強い印象を残しました。小姓のりん弥は、本公演で貴城が妖しい美しさで場をさらった役。天勢いづるはきれいなのですが、あまり目立たなかったのは残念。穂高ゆうは源太(楓沙樹)という盗賊の親方。眼帯をかけた不適な面構えに貫禄があり、ドンと座っているだけで怖く、演技のうまい人だなあと改めて感心しました。花純風香の磯路(灯奈美)には、独特の存在感があります。子どもを演じた花央レミ、夢奈さや、千咲毬愛が可愛らしかったのも印象的です。
そしてつい先月の4月は、第6回、月組「黒い瞳」( '98年。脚本:柴田侑宏。演出・振付:謝珠衛。新人公演担当:植田景子)を放送。2月に本公演がスカイ・ステージで放送されたことも記憶に新しい作品です。新人公演では、大和悠河が、真琴つばさが演じたニコライに挑戦しました。正義感に溢れ、純粋で一本気な、若きロシア貴族というこの役は、大和の当たり役といってもいいのではないでしょうか。冒頭の立ち姿が美しく、またマーシャ(風花舞)の花瀬みずかに対するまっすぐな愛、プガチョフ(紫吹淳)の大空祐飛に対する友情の表現はストレートにこちらの胸に響き、これはやはり大和の持つ、若さ、勢い、温かさといった資質の魅力なのでしょう。何より光がさすような明るさと華はスターとして天性のもので、そこに技術の裏付けが加わればまさに鬼に金棒、そんな感想を抱きました。花瀬は歌の人という印象が強かったので、名手風花に当てた雪の少女のダンスが心配だったのですが、それを可憐さでクリア。もちろん歌に関しては不安はなく、演技的にも的確でした。大空のプガチョフは、この公演の大きな収穫だったのではないでしょうか。甘い二枚目の印象が強かった大空にこの色濃い役は意外にはまり、力強い熱演で、以後大空のイメージが広がりました。この好演が、紫吹の休演による東京本公演での代役起用につながったようです。シヴァーブリン(初風緑)は霧矢大夢で、初風の屈折感は薄いもの、さすがの実力を発揮。歌にも説得力がありました。本役の千紘れいかが圧倒的な貫禄と位どりを示した女帝エカテリーナ・世は、西條三恵。芝居心のある人なので、終盤のマーシャとのやりとりは聞かせました。月組は伝統的に脇役の層が厚い組で、新人公演でもその点は同じ。サヴェーリィチ(未沙のえる)の華路ゆうき、ミロノフ大尉(立ともみ)の越乃リュウ、セルゲイエフ(名城あおい)のあゆら華央らが印象に残ります。進行役のトリオ(霧矢、嘉月、大和)の一色瑠加、楠恵華、紫城るいも健闘していました。
そして今月5月は、宙組「カステル・ミラージュ」( '01年。作・演出:小池修一郎。新人公演担当:植田景子)。残念ながら6月に退団する椿火呂花が、星組から組替えになった直後に新人公演初主役を演じた作品が登場します。マフィアの世界でのし上がり、愛ゆえに死んでいくレオナード(和央ようか)を演じています。このレオナードは、まずスマートでシャープ。スーツがよく似合い、現代的でクールな美しさは、見ほれるほどでした。またアップで見る、死を決意するに至る心の移ろいの表現がデリケートで、死の寸前に見せるかすかな微笑、崩れ落ちるような倒れ方は忘れられません。表情を見ていると、顔立ちの印象よりも優しく繊細な人のような気がします。今ではめずらしいそういった正統派の資質が期待できただけに、早すぎる退団は本当に惜しまれます。レオナードの運命の女性エヴァ=マリー(花總まり)を演じるのは、やはり花組から組替えしたばかりの彩乃かなみ。下級生時代からハートのある演技と美しい歌声で有望視されてきた人で、新人公演、バウ好演などでヒロイン経験は十分。持ち味がずいぶん違う花總の役を演じても違和感を感じさせないのはさすがで、説得力がありました。椿に寄り添う優しい風情も気持ちのよいものでした。新聞王リチャード・テイラー(湖月わたる)には、これまた月組から組替えしてきた遼河はるひ。長身を生かして大物の役に挑戦しています。彼女もまた当時急上昇中の人で、まだ場慣れしていない戸惑いもあったのか少し線が細い気もしますが、タカラヅカニュースで放送された’02年の「鳳凰伝」新人公演では主役をつとめ、なかなかの貫禄を示しました。レオナードに対抗心を燃やすフランク(成瀬こうき)には速水リキで、童顔に似合わない黒い敵役を熱演し、強い印象を残します。映画スターのジョー(水夏希)は華宮あいり。華やかな容姿が映画スター役にぴったりでした。公爵夫妻(大峯麻友、陵あきの)には苑みかげとふづき美世。いかにも何か企んでいるような怪しげな雰囲気を出して、存在感を示していました。なお、今月は椿のバウ主演作「エイジ・オブ・イノセンス」も放送されるので、そちらも楽しみです。これは、椿の繊細な面が生きた作品だと思います。 さて7本分なのでいささか長くなってしまいましたが、いかがでしたか。来月はなんだろう、再来月はどうだろう・・・とそんな期待を抱きつつ見守っていきたいシリーズです。スカイ・ステージでの放送を通して、今まで特に注目していなかった公演もチェック、様々な魅力にも出会えるのは嬉しい限りです。 次回は、星組新トップ、湖月わたるを取りあげる予定です。お披露目特集の放送も近々始まります。できるだけ早くご報告したいと思っていますから、みなさんお楽しみにお待ちください。では次回までごきげんよう。MKでした。 |
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■カウントダウン特集バックナンバー(2001年4月17日〜2001年7月1日) |
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