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![]() ここのところ週末はずっと雨。カラッとした晴れがほとんどない5月でした。このまま梅雨に突入しそうな空が恨めしい…寒すぎたり暑すぎたりして、気持ちのよい春や秋が年々短くなっている気がします。これも地球温暖化の影響でしょうか。 今回の番組チェックは、演出家 阿古健特集。まずは、演出家と語るシリーズの第11回「阿古健・榛名由梨・順みつき」。演出家だった阿古健とOGの榛名由梨、順みつきが登場。そして氏の作品から新たに『ミル星人パピーの冒険』と『梨花 王城に舞う』が放送され、麻実れいの退団作品だった『はばたけ黄金の翼よ』も再放送されました。トークとともにそちらもちょっとチェックしてみましょう。 演出家と語る「阿古健・榛名由梨・順みつき」は、3人が古きよき時代のタカラヅカの思い出を語るトーク番組。一生懸命稽古した新人公演時代のこと、出演した阿古作品のことなど、いろいろなエピソードが飛び出しますが、2人が口を揃えて言った阿古の印象は、とにかく豪快で熱い人。学生時代はフェンシングの選手だった阿古の稽古場は運動部ののり。監督という感じで、号令のもと一丸となって火の玉のような稽古が進んだそうです。
榛名の下級生時代、いちばん印象的だった思い出は、入団3年目、『海の花天女』(1965年月組/平岩弓枝作・春日野八千代演出)の新人公演で、本役が上月晃という大役に初抜擢され、阿古の指導を「手取り足取り」受けたときのこと。「可愛いときだもの。ポチャーっとしていた」という阿古に、「いえいえ、ポチャーとしてない。あのときは(頬が)細かった」と口を尖らせる榛名の表情がキュートです。「でも可愛かったんね。ショーちゃん(榛名)可愛かったもん」、阿古はあわてて大阪弁で返します。この辺のやりとり、昔なじみならではのおかしさがありますね。榛名たち主要メンバーは演出家が帰ったあとも夜11時くらいまで、守衛のおじさんに怒られるまで熱心に稽古していたとか。阿古は「稽古が好きやったもんね。俺ね、生徒が好き。好きだからうまくなってほしい」。とにかく稽古熱心な生徒が好きなのです。「生徒の個人的なことにはぼくあまり興味ないのよ。ただ稽古場で、目の前でやってくれる生徒だけはものすごく好きだけどね」とも語っています。
榛名が月組主演男役になったあとの思い出はまず『隼別王子の叛乱』('78年月組/田辺聖子原作)で、これには順も出演しています。脚本が書き上がった阿古が榛名の家まで来て、「書けたから読んで」と言って、目の前で直筆の分厚い脚本を読ませたこともあったとか。「どや? どや!」と迫る阿古を前に、榛名は必死で読んだそうです。この作品は最後に屋台崩しがあり、矢が刺さって、髪がバサッと乱れるという仕掛けとタイミングがあり、歌もあり、「あれは難しかった、先生」と榛名。その場面の映像も流れますが、なるほどこれは難しそう。 順の下級生時代の思い出は、やはり新人公演でお世話になったこと。そして阿古の『紅椿 雪に咲く』('74年雪組)で主役の毛利小平太を演じています。「あのころ時代劇づいていたけれど、立ち振る舞いとか何も知らなかったのを、先生に全部教えていただいた」と言う順。 この作品の最後に雪が舞うのですが、これは通常の四角でなく三角形でした。「あれはぼく、長谷川一夫先生の舞台見て、長谷川先生の雪がものすごかったのよ。で、名古屋まで行って、今日はちょっと雪の勉強さしてくださいと(笑)。ものすごくきれいに回るのよ。そしたら雪の形が四角と違うのよね三角でね。で、ぼくはそれをもらってきて、小道具にこれを作ってくれと言って。で上からと、上下から扇風機でワーッとやったら、見事にワーッと回って」。阿古の熱心さを物語るエピソードです。
しかし順がなんといっても忘れられないのは、中南米公演('78年メキシコ/アルゼンチン/ブラジル)。阿古は演出の責任者として公演に同行。アキレス腱を切るという怪我をしながら、向こうのスタッフ相手に、大阪弁で怒りまくって仕切り、公演を成功に導きました。舞台機構の違いや不備(吊りものを吊る棒が鉄でなく竹だった)、現地スタッフの不慣れと間違い(日本物の幕開き、チョンパでパッと明かりが点かなければいけないのにボワーッと点いた)に「なにやっとるんや!!」と大声で日本語で怒鳴り、なんとかさせてしまった。さぞかし迫力があったんでしょうね。「ショーのサンバのときに、ビバ! って言ったら金モールをポンと降ろさなければいけないときに、ピンクの提灯がバッと降りてきて(笑)、また先生が怒鳴って…そのときの阿古先生の印象、忘れられないですね。豪快で」と順。 トークは舞台映像をはさみながらなごやかに進行します。またその映像がめずらしく貴重なのです。'77年雪組『鶯歌春』、'87年花組バウホール公演『ドリーム・オブ・ドリームズ』、'78年月組『隼別王子の叛乱』、'81年月組『白鳥の道を越えて』、'83年雪組『ブルー・ジャスミン』、'82年星組『ミル星人パピーの冒険』、'85年雪組『はばたけ黄金の翼よ』、'87年雪組『梨花 王城に舞う』…。スカイ・ステージで放送されたものもまだのものもありますが、阿古氏としてはめずらしい洋ものバウ公演『ドリーム・オブ・ドリームズ』はぜひ見てみたいと思いました。大浦みずき主演のショー的要素が強い作品です。
話は進み、稽古場から初日、公演中に味わえる一体感、醍醐味について。生徒、演出家、スタッフ、そして観客…宝塚ならではの家族的な一体感は外ではなかなか味わえないのです。 (順)「演出家とこちらのやらせていただく方の立場が一体化したらいいですね。」 (榛名)「一つのものを作るのに、バーッと初日に向かって一つの気持ちになって、ズーッと続いて、初日迎えるっていいですものね。初日終わったあとはね…」 (順)「客席とも一体化して」 (榛名)「お客さまにも喜んでもらってる空気が感じられたらね、その醍醐味がやっぱり舞台立ってての幸せですよね。先生たちは、初日開いてしまうと、役者に渡してしまったという寂しさがありますでしょ?」 (阿古)「しつっこく見てたけどな、僕。しつこく見ていて、ダメだし行ったりしてたけどね」 (榛名)「(笑)でも、離されちゃうと私たちも寂しいですからね。先生からダメだしがあると、私たちもまだ見放されてないっていう気持ちで、やっぱりうれしいよね」 (阿古)「緞帳降りるやいなや走っていってな、こら! お前、あそこおかしいやないか! ってね(笑)」 (榛名)「(笑)ちょっと隠れたりして」 (阿古)「そういう関わり合いがやっぱり大事だと思うね」 (順)「私、先生のしつこいの(笑)、大好きでしたよ。みんな、今日見てる、今日見てる、っていう感じでね、やっぱり引き締まりますね。見てもらってる、うるさいのが見てるって感じが、いい緊張感を与えます。やってる方に」
(阿古)「ぼくたちが書いたものを、生身の人がね、毎日毎日、初日から千秋楽までやってもらえるっていうことの貴重さって言うかなぁ、あれはもう感謝したいね。書いてるときはね、思いつきで書くセリフってやっぱりなかにはあるものね。その思いつきのセリフにしたって大事に体のなかに入れてくれてね、毎日毎日やってくれるわけよ。感謝以外の何ものでもない、って感じがするね。だから、生徒の方に足向けて寝られへん(笑)。極端に言うと、そんな感情になる」 (榛名)「私たちは同じように、私たちの個性を引き出していただいて、大事なセリフもいっぱい書いていただいて、生かされるっていうことに対しては、先生に足向けて寝られない、っていうのはあります」 (阿古)「だからやっぱり、チームワークが固ければ固いほどいい結果が出てくるっていうことはあると思うよね」 (榛名)「空気がなんとなしに、みんなの気持ちが一つになってるって感じるときありますね、ホント。あれだけ大勢でも」 (阿古)「ほんまそうやね。何十回公演だから、まぁ毎回毎回そうは行かないけども、やっぱりピターとする日あるわね。そのとき気持ちいいやな」 (榛名)「その醍醐味が忘れられない」 (阿古)「お客さまの拍手をいただいたり、笑い声やら、涙を見るとね、やっぱりいいな、っていう世界やね」 (順)「毎日違うお客さまですからね」 (榛名)「一日一日、やっぱり気持ちが違う、空気も違う、すべて違う。新鮮な感じ。やればやるほど発見もあるよね、毎日やってて。はっ! えぇ? とか、気がつくとこがね。こんなことまだ気がついてなかったのかとか…。回数できるってことは幸せなことですよ、やっぱり。タカラヅカは劇場を持っているのでタカラヅカの生徒は常に出られるわけだけども、ほかの劇場のない人たちは公演終わったら今度いつどこの劇場に出られるか分からないから、外の方はみなさん(生徒に)タカラヅカほど幸せなところはないとおっしゃいますでしょ。外へ出ると、そのありがたみが分かるんですよね」 (順)「昔から、宝塚我が心の故郷って言いますが、いま先生の顔見てるだけで、涙出てくる(笑)。それでみんなと会うとね、前のままで…」 (阿古)「そうそう、そのときに戻ってしまう。何十年会わなくても、会えばその時点でパッと戻るってのはすごいな。いろんな悩みとか苦しみとか喜びとかあるやん…そういうものがお互いの共通のものになる。そういう心の結びつきっていうのはすごく深いものがあるんだろうね、きっと」 その後も韓流ブームのスターたちの植物的で清潔な感じはタカラヅカに合うとか興味深い話が続出しますが、詳しくはぜひ放送で。 阿古からの「いま振り返って、タカラヅカはなんだった?」という問いに対する2人の答えを紹介しましょう。 (榛名)「タカラヅカに育ててもらって、いま現在外の舞台に立たしていただけるのもタカラヅカのおかげ。私の人生そのものです。いろんなことを教わって、それがすごく役に立って、いま現在もみなさんに呼んでいただける舞台があることは、ほんとうに幸せ」 (順)「自分の人生のなかで、やっぱり青春を全部つぎ込んだすべてであったし、私はタカラヅカを知らないで入りましたけど、そこで学んだことはこれからもっと歳を重ねていって、もっともっと心の奥深く故郷なるんだろうなと、感謝の気持ちでいっぱいです。いろんな思い出とかがあっても、いまは全部、感謝に変わってますね」 「これからタカラヅカがどうなっていく、どうなってほしいか」に対し、榛名は「100周年、110周年、私たちがこの世にいなくても、永遠に続いて輝き続けてほしい」。順は「もっと世界に羽ばたいてほしい。日本にだけ置いておくのはもったいない。アジア、世界に羽ばたくタカラヅカであってほしい」。そんな言葉で番組は終わりました。 初放送された『ミル星人パピーの冒険』と『梨花 王城に舞う』についてもちょっとチェックしてみましょう。
『ミル星人パピーの冒険』は'82年星組の公演で、主な出演者は瀬戸内美八、東千晃、峰さを理。ミル星から地球にやってきた宇宙人パピー(瀬戸内)が、ふしぎなペンダントのおかげで超能力を発揮し、意にそわない結婚をさせられそうな王女アン(東)と恋人エリック(但馬久美)を助けるというストーリー。峰はレビュースターのジェラール役で、歌やダンスのショーシーンもいっぱいの、肩が凝らないメルヘンです。しかしこのころのスターたちはいまよりずっと大人っぽいんですね。そして押し出しが強い。そんな出演者たちが童話的な話を色濃く演じているので、メルヘンが子供っぽくならず、大人にもおもしろい作品になっていました。甘さだけでなく悲哀や皮肉、さまざまなものが感じられるんです。
『梨花 王城に舞う』は'87年雪組の作品で、主な出演者は平みち、神奈美帆、杜けあき。一路真輝や紫ともも出演してます。これはマルコ・ポーロ(平)が元の時代の中国に渡り、フビライ汗の信任を得ているところからはじまる物語で、洋ものと中国もの両方が見られる趣向。マルコ・ポーロとフビライ汗の皇女・玉蘭(神奈)、フビライ第三王妃の麗妃(仁科有里)と元に降った南宋の将・范文虎(杜)、高麗からの人質の姫・秀玲(紫とも)と伴の武将・崔竜鳳(一路真輝)という3組の恋の行方が描かれています。平はとにかく明るい芸風の人なので、マルコの恋には深刻な感じはありませんが(ただ、天才娘役といわれ早々に退団し家庭に入った神奈のしっとりとした演技には驚嘆しました)、杜と仁科の悲恋の暗く凄みのある表現、一路と紫の可憐な姿は、ちょっと見物でした。 阿古の作品としてはほかに、以前放送されたことのある『はばたけ黄金の翼よ』が流れました。これは'85年雪組のもので、麻実れいの退団作品。相手役として若き日の一路真輝が娘役で登場していて、これがものすごく可愛いらしい! 抜群です。 さて次回の番組チェックですが、6月はいよいよラスト、和央ようかのサヨナラ特集第2弾です。『ホテル ステラマリス』『レヴュー伝説』東京公演の千秋楽映像が見られますし、舞台映像からトークなどが続々登場。若き日の姿が見られる『four colors』(共演は香寿たつき、姿月あさと、紫吹淳)も見逃せない。花總のサヨナラ特別番組「タカラヅカの花よ、永遠に…」も楽しみです。ほかには今年のバウ公演、月組の『Young Bloods!!』が早くも登場しますし、大和悠河『十二夜』、真矢みき『ブルー・スワン』、『ファントム』宙組新人公演などなど。おおいに迷うところですが、次回もぜひお楽しみに。M・Kでした。 |
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■カウントダウン特集バックナンバー(2001年4月17日〜2001年7月1日) |
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