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![]() まだまだ寒い日もありますが、日射しはもう春。桜のつぼみもふくらんできて、もうすぐ開きそう。ということは花粉症の季節でもありまして、私も毎朝くしゃみを連発しています。 さて久しぶり、今回の番組チェックは、2月4日に初日を迎えた月組『エリザベート』の関連番組、制作過程をつづった“プロダクション・ノート”と、一路真輝、初風諄を迎え、潤色・演出の小池修一郎と、トート役の彩輝直、エリザベート役の瀬奈じゅんが語る“トークセッションスペシャル”、この2本を取りあげましょう。 『エリザベート』は、’96年の雪組初演以来9年で5組目、これで全組上演となった名作ですが、今回の話題はまず、月組の主演男役・彩輝直がこれで退団となったこと、そして瀬奈じゅんが男役としてはじめてエリザベートを演じるということでしょう。とくにバリバリの“男らしい”男役の瀬奈のエリザベートは、大きな反響を呼びました。
まずは『エリザベート』プロダクション・ノートから。どんな作品でも舞台を作り上げる過程は大変に決まっていますが、とりわけ難解さで知られる『エリザベート』。その苦労はひときわのようです。膨大な譜面との戦い、役づくりのプレッシャー…そんな苦労の過程を、’04年9月22日のポスター撮影風景、10月2日の制作発表から、’05年2月4日、開幕寸前に本番同様に行われた通し舞台稽古の模様まで、映像でくわしく追っています。 内容的には、演出の小池修一郎、そしてトート・彩輝、エリザベート・瀬奈、さらにフランツ・初風緑、ルキーニ・霧矢大夢、ルドルフ・大空祐飛のコメントと、稽古の様子を交互に見せる構成。歌稽古、振付などの部分稽古、通し稽古、そして通し舞台稽古と、だんだん作品が立ち上がっていく様子が、よくわかります。 まず印象的なのが、歌稽古。歌唱指導の楊淑美を囲み、みんなで発声練習する光景が、いきなり流れます。全身を持ち上げ、ジャンプし、身体をリラックスさせながら喉を開いて声を出す…楽曲へのとり組みも、そこから始まるわけです。 そして譜面との格闘が始まります。『エリザベート』最大の難関は、楽曲の難解さだと言われます。すべてが音楽でつづられるミュージカルで、音一つ狂うと成立しない難しさがあるうえ、その楽曲が実際に歌ってみないと分からない難解さだとか。ですから『エリザベート』の稽古は、再演を何回くり返そうともいつも、まず一人一人が膨大な譜面にとり組むことから始まるのです。今回の月組も同じで、みんな片手に譜面、片手にペンを持ち、注意されるたびにメモを取りながら懸命にとり組み、悲壮感さえ漂っています。しかし一生懸命さが極まると笑いがおきるのか、互いに笑い転げる場面もまた多いのです。この辺が今の月組の温かさなんでしょうね。仲のよさがうかがえます。 主役の彩輝ももちろん例外でなく、何回もくり返し歌い、注意を受け、そしてメモを取り…でもどんなに必死でも笑顔を絶やさないのがこの人のチャームポイントでしょうか。そして宙をにらみながら「私だけに」をさらう瀬奈、片手で拍子を取りながら音を取る初風…霧矢も大空も、みんな懸命です。 また、音楽がずっと流れている作品ですから、コーラスの大変さもひとしお。全員譜面をにらみながらの懸命な稽古がつづきます。先生の注意一つで音にグッと厚みが加わるのには感心しました。下級生の真剣な表情が可愛らしいので、その辺にも注目を。 振付場面では、ラインダンスの稽古が印象的でした。全員が身体の線が出るレオタード姿で、太鼓が響く中、カウントを確認しながらの稽古がつづき、アッという間に振りが付きます。なるほど、こういう稽古についていくために音楽学校の2年間はあるのだなと感心したほどの、速いテンポです。それにしてもタカラジェンヌは本当にスタイルがいい。鍛えられた体型がまぶしいばかりです。 フィナーレのダンス稽古もくわしく流れます。回数を確認しながら反る振りをくり返す大空は、身体がきついのでしょうか、思わず苦笑いを浮かべながらがんばっています。ダンス巧者で知られる霧矢が、出す足を間違えて笑う場面が、とてもキュートです。
通し稽古映像では、2幕冒頭のルキーニ写真撮影場面(「NOW ON STAGE」で霧矢が、なで肩でフラッシュのヒモがずり落ちて困っていると言っていたのを思い出しました)、トートと子ルドルフ(彩輝の妹の彩那音)、ルキーニとマダムヴォルフ(嘉月絵理)、リヒテンシュタイン夫人(紫城るい)と女官たち、そしてエリザベートの病院訪問、ヴィンディッシュ嬢(椎名葵)との場面が見られます。病院訪問の場面は通し舞台稽古の映像へとつづき、稽古を経た瀬奈の演技の深まりがよくわかります。 そして圧巻は2幕のハイライト、トートとルドルフの場面。トート・彩輝とルドルフ・大空、稽古から通し舞台稽古へと、二人とも目が行っている! 思わず引き込まれるような迫真の演技です。ニヤッと笑うトートが悪魔的ですごみがあります。そしてルドルフは被虐的というか、苦しさが極まった恍惚を浮かべて…。二人とも稽古の合間に見せる可愛らしい素顔とはまったく違う舞台顔で、“役者の狂気”という言葉が浮かびました。 晩年のエリザベートとフランツの名場面、“夜のボート”では、瀬奈・エリザベートと初風・フランツがしっとりと説得力のある歌を聞かせます。フィナーレの稽古、舞台稽古、舞台稽古後の挨拶とつづき、番組は終わりました。
こういう番組が楽しいのは、稽古場の出演者の、たぶん本人たちもあまり意識していない素の表情が見られること。失敗したときの照れ笑い、周囲の励ますような温かい反応、必死に練習にくらいつくさま、一息ついたときの仲のよさそうなやりとり…そんな様子も楽しかったですね。それにしても女役として歌う瀬奈の声、響きにニュアンスと深みがあって、なかなかいいですね。ちょっとびっくりしました。少し伸びた髪を自然に垂らし、きれいなブルーのストールを垂らした姿…エリザベートがかなり入っていました。 次は『エリザベート』トークセッションスペシャル。初演の雪組公演でトートを演じ、東宝版ではエリザベートを演じている一路真輝と、東宝版のゾフィ・初風諄という卒業生を迎え、彩輝、瀬奈、そして小池が『エリザベート』について語っています。
各自の自己紹介のあと小池が、今年は阪神淡路大震災から10年だが、’96年の雪組初演の稽古中、阪神淡路大震災からちょうど1周年で、稽古場で黙祷を捧げたと語ります。一路にとっては、その1年前、震災直後に公演した、やはり小池演出の『JFK』の方が強烈で、まだ電車も全部は動いていなくて宝塚大劇場にお客さまが非常に少なく、「正直辛かった」と述懐。そういえば“サヨナラ”メモリアルとして2月に放送された一路の退団記念ビデオ『Eternal Muse』中のサヨナラショーでは、『JFK』が大きく取りあげられていました。この作品に対する一路の思い入れの大きさには、なるほどそういう理由もあったのかと、納得しました。 その『JFK』から1年後、『エリザベート』の初演の大変さ…一路の話は続きます。今でこそ名作と言われ、人気抜群の『エリザベート』ですが、公演が発表されたときは“死”を主役にするということで「こんなことをタカラヅカでやっていいのか」という否定的な意見が多かったとか。制作発表の記者会見場にトートのメイクと衣装で登場したときの「ブーイング」、そしてのちに退団を発表したときの「この作品でやめていいのか」という反応に、一路と小池、2人して「落ち込んだ」そうです。歌稽古の大変さ、ポイントとなった歌唱指導・楊淑美の存在、その楊と吉田優子、そして甲斐正人と生徒一同でずっと歌稽古をしていたなど、興味深い話がたっぷり。 初風はその初演を観て「何てすばらしい作品だろうと思った」が、東宝版でゾフィをやることになり、「観ているときはそんなに思わなかったんですね。やってみてはじめて大変だったんだってわかったんです」…『ベルサイユのばら』の初代アントワネット、プリマドンナで知られる初風にしてそう感じる、それほど『エリザベート』の音楽は難しいようです。 収録は1月、稽古まっ盛りの時期で、彩輝と瀬奈は「苦心してもがいている」最中。2人から先輩の一路へ真摯な質問が飛びます。聞き応えのある話がたくさん出てくるので、ぜひ放送を観ていただきたいのですが、印象に残った話をいくつか紹介しましょう。 まず彩輝から一路へ、タカラヅカ版のトートを作るうえの苦労は? 一路は、タカラヅカ用のオリジナル曲“愛と死の輪舞(ロンド)”の「蒼い血を流す」という小池の歌詞をヒントに、メイクも工夫し氷のような冷たい表情で、クールビューティ、温度が低く、感情は底の底にためて最後に爆発させるという役づくりをしたと語ります。「でもその後オランダなどで観て、トートには決まりはないと今は思っている」から自分なりに作ればいいと、彩輝を励まします。 また、エリザベートにとってトートとはどういう存在か? という小池の問いに対する一路の答が、ちょっと意表をつかれたというか、おもしろかったですね。エリザベートを経験した今の考えとことわったうえで、「トートはエリザベートの“心”だと思っている」というのです。『風と共に去りぬ』の「スカーレットに対するスカーレットIIのような存在」だというのです。
瀬奈は、昨日はじめて通してみて、エリザベートをするにあたって根本的に通ってなければいけない何かがなにも通ってなかったと痛感したが、一路がエリザベートをやるにあたってどういう気持を大切に重きを置いているか、と聞きます。 それを聞いて苦笑する一路。4年前に東宝でエリザベートをはじめてやったとき、よく知っている作品で、エリザベートの歌も耳で聞いて知っているし、「タカをくくっていた」部分があったが、「はじめて通したとき泣きました。あまりにも何もできなくて」。キーが出ないとか物理的な部分でも追いつめられ、毎晩家で泣いていたそうです。そして「ギリギリのところに立っているエリザベートと自分を重ねてやってたの」。 「毎晩家に帰ると不安が押し寄せてきて」という瀬奈に、「その不安とエリザベートの不安を重ね合わせて」とアドバイス。「この役はそのように追いつめられる役なのよ。でもそれを経験した方がたぶんいいのよ…曲も難解だし曲数も多いから、つなげるのは至難の技なんだよね。やっぱり何度も通して、舞台上でお客さまの反応の中で自分の立場がわかってやっとつながる。でもあんまり落ち込んでいると声も出なくなるし(笑)。…だけどエリザベートはドンドン陰に入ってくから、そのギャップで苦しむのよね(笑)」。2人の間でエリザベート役の苦心談が盛り上がります。 稽古場で我知らず泣いてしまったなど、彩輝の実感のこもった話のあと、話題は男役が女役をするということに。研3で麻実れいの相手役としてヒロインをやった経験があり、スカーレットも演じている一路、実は男役出身で、研1で明石照子の相手役をつとめ女役に「変えられた」初風、オスカルや『PUCK』でヘレナの代役なども経験した彩輝、そしてスカーレットに続き今回のエリザベートが2回目の女役となる瀬奈…話が弾みます。 瀬奈に対する一路の言葉が示唆に富んでいます。ファンの人から「男らしい男役」を求められるという瀬奈、「エリザベートが終わったらバリバリの男役に戻りますよ」と言ったのに対し…。 「あまり無理しないでいいじゃない…エリザベートをやったときに、ものすごく不安ですごく怖かったけど、植田(紳爾)先生に“舞台のまん中で堂々と空気をつかんでバーンとソロを歌えるのは、男役でトップを立ったことのある人間しかできないんだよ。だからもっと自信を持ってドーンと立ってなさい”って言われたの。それがすごく助けになったことがある。…あと麻実さんにも言われたんだけど、私は女役ではじめて麻実さんに抜擢されて本公演でいきなり主役になっちゃって、ものすごく不安だったけど一応一人で舞台のまん中に立ったのね。そしたら麻実さんに、“女役だろうが一人でまん中に立った経験は男役に役に立つのよ”と、逆のことを言われたのね(笑)…だから本当にあんまり考えない方がいいと思うのよ。男役だから女役だからじゃなくて、あれだけの広い劇場でソロでまん中で立ってらいられるっていうことを自信に変えてった方が勝つと思うのよ。少々声がひっくり返ろうが音がはずれようが、悩んでいる方が絶対損。どうあろうが、観てる人を、あ! 今、エリザベートが“私だけに”を歌ってるんだ! っていう世界に引き込んだもの勝ち」…その言葉に、真剣に聞き入る瀬奈の表情が、ひときわ印象的でした。
小池の5演目への抱負など興味深い話が続きますが、ちょっとびっくりしたのが、歌が上手だから女役に転向したと思っていた初風が、実は歌が苦手で、しかも音域がアルトだったという発言。転向後、女役の歌を訓練するために、地方公演先でも声楽の先生を見つけて欠かさず稽古に通っていたそうで、プリマドンナのこの裏の努力には、頭の下がる思いでした。 さて次回の番組チェックはどうしましょう。私がいつも楽しみにしている番組に、「演出家と語る」シリーズがあります。今までも折りにふれご紹介してきましたが、次回でまたチェックできたらと思っています。しかし4月は初舞台生の季節。また「TCAスペシャル2004」、“サヨナラ”メモリアルシリーズの高嶺ふぶきなど、楽しみな番組がめじろおし。目移りしますね。どうしましょうか…楽しみにお待ちください。M・Kでした。 |
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■カウントダウン特集バックナンバー(2001年4月17日〜2001年7月1日) |
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